恋心の隠蔽

「自分の恋心を、少なくとも本人に打ち明ける前は第三者に知られてはならない」、そういう奇妙な思い込みが自分にはあった。だから、恋の悩みを人に相談するなんてこともやったことがなかった。第三者に恋心が漏洩しては恋心の純粋さが汚れてしまうような気がしていたからだ。いや違う。そんなロマンチックな理由じゃない。単に、「やーい、anotherったら、○○ちゃんが好きなんだー」とか囃されるのが怖かっただけだ。
くっだらない! なんて臆病すぎるんだ! そんな幼稚な囃し方をするのはせいぜい小学生止まりだ。たとえば高校生にもなってそんなことを言う奴は、遠慮なく軽蔑し去って全然良かったのに! でもその辺の感覚が全然分からなかった。小学生の頃軽度のいじめられっ子だった影響がこういう形で尾を引いていたのかも……。