ネットが対面コミュニケーションに及ぼす悪影響二題

会話の遂行に不都合が出る

ネットにおける意思伝達の方法は、圧倒的に文字を介して行われる。Podcastingなどもあるとはいえ、それは例外に留まっている。文字情報を読解する速度は各読者の裁量に任せられ、難解な部分は何度読み返してもいいし、文脈が紛れたら、一時的に数段落前に戻っても構わない。だから、文章によるコミュニケーションに慣れてしまうと、必要最低限以外の文脈を平気で忘れるように脳細胞が再結線されてしまう。しかし口頭言語では自分の勝手で巻き戻しをするわけにはいかず、聞き手は、話し手の発話速度につきあいつつ、話し手の述べたコンテキストをひととおりバッファに残しておくというオーバーヘッドを迫られる。故に、文章言語に慣れ過ぎると、最悪の場合、会議やミーティングを遂行する能力に支障が出てしまう可能性がある。

後出しジャンケンをやってしまう

ネットは時間を縮めると同時に伸ばしてもいる。ネットがなければ伝播に1週間くらいかかっていたはずの情報が、ものの数時間で広まるようになった。しかし、ごく短い時間に起こるできごとについては、逆のことが起こっている。即ち、対面ではコンマ数秒単位で伝達できるはずのもの(表情とか)が、ネットで伝わるには数分かかる。人がジョークにウケるのを見てから数秒後に追従して笑う奴はリアルではとろい奴でしかないが、ネットでは同じことをやっても誰もとろいと非難する者はない。後出しかどうかの検証のしようがないからだ。従って、ネットをやりすぎると、後出しジャンケンの感情表出戦略をリアルでもやってしまって顰蹙を買うおそれがある。


……以上のどちらも自覚症状に基づいて書いたのですが、しかし単にどちらも、ネットのことばかり考えて心がそこにないから起こっている現象に過ぎず、従って上記の論述はただの屁理屈に過ぎないかもしれないと気づいて愕然としました。