なかります、あるいは、日本語への要望
日本語の形容詞は、過去形にすることと丁寧形にすることとを同時に行うことができない。例えば「ない」の場合、
となり、過去かつ丁寧にしようと思うと、「ない」を一度裏返して「ある」にしたものに丁寧の「ます」をつけて「あります」とし(「ます」は動詞にしないとつけられない)、改めて否定して「ありません」という語形を導くという面倒な過程を踏まなければならない。なるほど、こんな面倒な操作が必要だというのならば、単に「です」をくっつけて「ないです」とした方がよっぽど考えなくて済むというものである。しかしこの解決策はいささかアドホックで、あまり論理的ではない*3。
というわけで、僕はここで冗談半分に「ない」の丁寧形として「なかります」という語形を提案するものである。現代日本語の形容詞の連用形には音便化した「-かっ」しか残っていないが、これを音便化する前の「-かり」に戻した上で、連用形につく「ます」をつける、という算段である。そして、この語形を導入することによって、上述の面倒な操作に訴えず、かつ余分な形態素を加えることもなしに、めでたく形容詞自体に過去と丁寧の両方の要素を付加した「なかりました」という語形を生成できるようになるのだった。
もう少し応用例を載せると、「良かったです」→「良かりました」、「美しかったです」→「美しかりました」、等々となろう。
(翌日追記: id:DocSeri:20050304#1109905637で、少し関連のある話題が触れられている。)