『牛丼を変えたコメ‐北海道「きらら397」の挑戦』(ISBN:4106100827)

北海道での帰省中に読むのにある意味ふさわしい本かと思ったので。
イネの生育に厳しい北海道という土地で、明治以来100年にわたって営々と品種改良にいそしんだ結果、ついにきらら397ができました、という、非常にプロジェクトX的な本。従って、確かに吉野家は最初の方に少し出てくるが、牛丼云々というタイトルはあまり適切ではない。
いま「プロジェクトX的」と言ったが、これは別にけなしているわけではない。むしろ、門外漢には毎年代わり映えのしないように見える水田は、実は常に最新の研究成果を取り入れており、例えば今の水田に植わっているものは10年前のとは全然違うのだ、というようなことを気づかせてくれたので有意義だった。蒙を啓かれるとはまさにこのこと。
ところで、初歩的な質問。どうして政府は、生産量の増加に伴って余ってしまった米を、輸出しようとしない/しなかったのだろう? 食糧管理法が禁止していたから? それとも、ある種のイデオロギー的にありえないことだから? コメについて変なイデオロギーとか制度とかがなかった戦前なら、平然と輸出していたと思う。