余は如何にして日本放送協会に律義に受信料を支払う主義者となりし乎

id:another:20030829を書いたせいか「NHK」「受信料」「拒否」などで検索してくる人がちらほらいるようなので、この件についてもう少し反動的なアジをしてみたい(こうやって頻繁に検索される言葉に色気を出しちゃうから、みんなテレビ番組とかアイドルとかの話ばっかりしちゃうようになるのかな……)。
なんで僕はこんな「社会通念に反した」主張をする気になったのか?
それは一つには、月1300円(地上波の場合)/2200円(衛星の場合)という価格を聞いて、昔僕が住んでいた学生寮の家賃のことを思い出したからだ。その寮の月あたりの家賃は、僅か400円だった。管理費とかを含めると5000円になるが、まあ一般市民から見れば犯罪的な価格だ。なぜこういう異様に安い値段になったかというと、国立大学の寮の相場通りに左翼がかった寮自治会が数十年にわたってあらゆる値上げに全力で抵抗し続けてきたかららしい。公共料金の値上げ=絶対に悪、そういう価値観でつっ走ってこれたというわけだ。しかも話はこれに留まらない。この僅か400円の家賃について半額および全額の減免制度が用意されており、書類審査によって経済的に非常に困窮していると見なされた者については 400円しかない家賃を免除してもらうことができたのである! 僕がこの寮に住んでいたのはかれこれ10年近く前のことだが、でも、月々400円が払えない苦学生なんておとぎ話の上の存在に過ぎないではないか!? しかしこれは弱者救済のための重要な制度であると滑稽にも寮自治会は大真面目に主張していたのであった。そして僕はNHKの受信料が月あたり1300/2200円と想像の数分の一の価格でしかないと聞いたとき、まっさきにこの寮の茶番を思い出したのである。
もう一つ。NHKの受信料を払わないというのは、一般市民にとって最もお手軽にできる「反体制運動」なのではないだろうか? いわゆる「戦後民主主義教育」のおかげで、日本の大衆は体制に従順であることは何となくいけないことであるかのように感じるようになっている(最近はあまりそうでもないみたいだが)。その罪悪感を薄めるための格好の手段として、人々はNHKへの支払いを拒否しているのではないだろうか? NHKの受信料について論じるとき、我々の語調は知らず知らずのうちに左翼的になっている。曰く「国家が勝手に送りつけてくる電波」とか。そして法律上受信料を払わなくても何の罪にもならないというのは先刻ご承知のとおり。だからこそ我々は安心して受信料の支払いをサボタージュして、世間並みに恥ずかしくない程度に反体制的な市民をやることができるのである。でもそれは あまりにお手軽に過ぎるのではないだろうか? 僕はその辺りになんとなく欺瞞的なものを感じ、こんなせこい反体制につきあうくらいなら いっそのこと払ってしまえ、と思うに至ってしまったのであった。
こういうことを書くと、いまにも僕のところに「おまえはNHKからいくら金を貰った!?」とかいう非難の声が飛んできそうだが、でも僕は逆にNHKに金を払っているのである。残念でした。むしろ、NHKに金を払わない=間接的に金を貰っているのは お前らの方ではないか。話が逆だろ!?