電車男になり損ねたかもしれない話

空港への列車内で、二人の妙齢の女性が談笑に花を咲かせており、僕はそれを微笑ましく見守っていた。しかし彼女らのひとつ前に座っていた男(推定20代後半・やや長髪・それなりに高そうなスーツ)が、いきなり振り返って「おめえらうるせえんだよ。ふざけるな。静かにすれや」「黙れって言ったのに黙らないのか? てめえら頭悪いんじゃないの」という信じ難い暴言を彼女らに浴びせた。僕の体内に怒りが走った。僕は思わず身構えて、その最低野郎にガンを飛ばさずにはいられなかった。「今度変なことを抜かしたらただじゃおかねえぞ」と。しかし、彼女らはこの男を大して気にかける様子もなく、相変わらず(多少はトーンを落としつつも)元通りに談笑を続けていたし、男もそれに追い討ちをすることはなかったので、やや肩透かしだったのだが。