読めない理由

母は私が子どもの頃から、ことあるごとに「あなたも女なのね」「色気づいちゃって」というようなことを言った。女であることは罪なことというニュアンスで。だから、恋愛を扱う少女漫画に共感して、のめり込んでしまったらそれこそ「女」になってしまうと、ちゃんと読むことすら出来なかった。

そういえば僕も、「のめり込んでしまったらそれこそ「男」になってしまう」と思って、エロ本とかエロビデオとかを見ることができなかった。
いや、ちょっと違うか。自分の場合、「男になってしまうことへの嫌悪」というジェンダーの問題よりも*1、無駄に成績が良すぎたせいで自分を周りとは違うエリートだと思い込み、その上で「特権階級に属する僕がエロ本など読んでしまっては、下賎の男どもの性観念に汚染されてしまう! そんなのいやだ!」という間違った階級意識から抵抗し続けていたのだから。だからより正確には、「のめり込んでしまったらそれこそ「下々」になってしまう」か。「自分はエロいものを見ないから偉い!」という倒錯したプライドの持ち方さえしていたし。本当にやな奴だったな。

*1:まあ、それも少しはあったかな。あまり筋骨がつかないままの自分の体格に割と愛着があったから。