固有名詞によるコミュニケーション
僕は、メインストリームの文化を避け続けていたと同時に、オタクのオルタナティヴな文化をもどこかで避けていたので、何らかの作品を媒介にした人づきあいというのを殆んどしたことがない。なんというか、有名な固有名詞を介したコミュニケーションの忌避。はてなでは非常に頻繁に映画とか音楽とかドラマとかアニメとかについての話題が交わされているが、僕にはその手の固有名詞が笑っちゃうくらいにさっぱり分からずに「どうしよう……」とか思ってしまうことがしばしばなのだ。著述家の名前が分からないでもないのがせめてもの救いだ。
また僕は昔から、分母が小さいカルチャーほど稀少価値があるという理屈で、どんどんマイナーなものばっかに興味を向けていた。図書館でのトンデモ本発掘とか*1。分母の大きいカルチャーには 同じ話題を共有することによって友達が増えるメリットがあるのだが、僕にはそういうメリットが見えなかったので、いつしかフィルターをかけるようになっていた。みんなが関心を持っているなら市場価値は低かろう、僕はもっと珍しいものを発掘するよ、と。
しかし、当初経済的発想から出たはずのフィルターは、いつしか恋愛や性愛の存在を否定するための要塞に変貌してしまっていたのだった……。大抵のフィクションにはそういう成分が含まれてるからさ、ね。
*1:まだ「トンデモ」という言葉がなかったころからやってた。